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【第5回】コンクリート漏水や完全止水はなぜ難しい?

【第5回】コンクリート漏水や完全止水はなぜ難しい?

――打継部・貫通部(Pコン・スリーブ)の調査手法から考える「予防保全」とディテール構築――
株式会社日本ザイペックス 
代表取締役 笹島 弘隆

コンクリート地下構造物において、「打継部」や「配管貫通部 (Pコン・スリーブ)」は最も漏水リスクが高く、いざ漏水が起きた際に完全止水が難しい部位でもあります。また、「何度も止水工事を実施しているのに漏水を止めきれない、どこから水が回ってきているのかもわからない。表面を見ても異常がないのに、なぜか水が回ってくる」――こうしたご相談は、コンクリートの予防保全や維持補修に向き合ってきた私たちのもとにも日々寄せられます。
特に打継部や貫通部からの漏水原因は、シーリングなど止水材の劣化だけではありません。初期変状としての打設不良や、地下水位の上昇、内部の微細な不具合等が複雑に絡み合っているケースが大半です。表面の補修 (フタ) だけで終わらせないためには、適切な試験によって「見えない水の道」を見抜くことが重要ですが、現場においては「調査そのものの困難さ」が大きな壁となります。
本記事では、打継部や貫通部からのコンクリート漏水に対し、原因を探るための一般的な調査手法を解説するとともに、「困難な調査を回避し、次回の設計ディテールにどうフィードバックしていくか」という予防保全の視点をお伝えします。

1. 打継部の漏水原因を探る 「散水試験」

打継部からのコンクリート漏水は、コンクリートの打継部界面のブリーディング水や異物を取り除く処理(レイタンス処理)を怠ることに起因する打設不良や、不連続な層、いわゆる「コールドジョイント」が関与しているケースが多く見られます。 コールドジョイントは、複数回に分けて打設する際、先に打ったコンクリートが硬化しかけた状態で次を流し込むことで生じる一体化の不良面です。また、止水板の周辺でコンクリートが骨材だけを残した状態(ジャンカ・充填不良)や、コンクリート打設不良に起因する止水板の変形が漏水を引き起こしていることもあります。
初期変状としてこうした打設不良が疑われる場合、建築現場でも実施しやすい調査手法が「散水試験」です。漏水を伴うひび割れ (水みち)の特定や、止水板の設置効果による意図した水返しが機能せず毛細管現象で雨水を吸い上げていないかなど、浸入箇所を段階的に追跡できます。「どの条件で漏水が発生したか」を記録に残すことが、Pコンや打継部への適切な補修仕様を決定する第一歩となります。

2.貫通部(スリーブ) 等に対する高度な検証(差圧試験・非破壊調査)

一方で、配管が貫通するスリーブ周辺などは、設備工の施工範囲とも絡み、目視での原因特定が極めて困難です。打設時のブリーディングによる微細な空隙が隠れていることもあります。 こうしたスリーブ周辺の複雑なケースや、土木・重要建築物における原因特定においては、専門の調査機関によって以下のような高度な検証手法が用いられることがあります。

  • 差圧試験: スリーブ周辺に差圧(加圧・減圧)をかけ、見えない隙間や空隙を見抜く。
  • 赤外線調査(サーモグラフィ) 温度差から内部に水分が滞留している領域を面的にスクリーニングする。
  • 内視鏡調査: 目地の奥深くに内視鏡を入れ、直接観察で原因を特定する。

これらの調査は、原因を科学的に裏付ける有効な手段ですが、同時に「別途発生する調査費のコスト」や「手配のハードル」という現実的な問題も抱えています。

3.現場が直面する「原因特定」の壁とコスト

私たち防水・補修の専門家が現場で直面するのは、まさにこの「調査のハードル」です。 「どこから漏れているのか完璧に知りたい」という思いとは裏腹に、大掛かりな調査を入れられないケースは少なくありません。結果として、原因が曖昧なまま、とりあえず表面を塞ぐ「事後処理(対症療法)」を繰り返し、再漏水に悩まされる現場を私たちは数多く見てきました。
「内部の真因にアプローチすること」は重要ですが、事後にそれを行うのは、コスト的にも工期的にも多大な困難を伴うのが現実なのです。

4.原因特定の知見を「ディテール (予防保全)」 ヘフィードバックする

だからこそ、私たちが提唱したいのは、漏水トラブルで得られた苦い知見を、次期プロジェクトの「防水ディテール」へと確実にフィードバックすることです。
スリーブ周辺で空隙ができやすいのであれば、事後の補修を前提とするのではなく、事前の配筋ピッチ等の見直しを行う。コールドジョイントや止水板周辺のジャンカ等施工不良のリスクがある打継部には、スラブと立上部の一体化を目指す無機材料による打継目地充填工法や、あらかじめコンクリートの微細な隙間を自己修復させる 「結晶増殖材」を練り込んだり、塗布したりする設計を組み込む。
事後に多大なコストをかけて「原因を探す」のではなく、設計段階から「原因を作らせない(あるいは自ら修復させる)」 アプローチをとること。これこそが、建設現場を漏水トラブルの泥沼から救い、構造物を長持ちさせるための確実なステップだと私たちは考えています。

5.まとめ

 コンクリートの打継部や貫通部、あるいはひび割れ等をはじめとするコンクリートからの漏水に対し、建築現場で一般的な「散水試験」から、土木や重要構造物で用いられる高度な専門調査(前述の差圧試験、赤外線調査、内視鏡調査など)まで、現場に応じた手法で原因を見抜くことは重要です。しかし、事後の原因追究には限界があり、特に高度な調査になるほど多大なコストが伴います。
だからこそ、「大変な事後調査」を回避するための予防保全として、次期プロジェクトの設計ディテールづくりに、ぜひ私たちを頼っていただきたいのです。
私たち日本ザイペックスは、世界中の過酷なインフラ現場でコンクリートと向き合ってきました。事後処理の難しさを誰よりも理解しているからこそ、コンクリート自らを緻密化させる「結晶増殖」と「躯体改質」という技術で、設計者の皆様の「漏水させないディテール構築」に寄り添い、全力でサポートいたします。

【参考ガイドライン・関連基準】

本記事で解説したコンクリートの打設不良(コールドジョイント、ジャンカ等)や非破壊検査技術については、以下の各種基準・指針等においてもその重要性や対策が示されています。

  • 日本建築学会『建築工事標準仕様書・同解説 JASS 5 鉄筋コンクリート工事』
  • 土木学会『コンクリート標準示方書』
  • 日本コンクリート工学会『コンクリートの非破壊試験技術』等

【参考・関連情報】

本記事で触れた、コンクリート自らを緻密化させるメカニズムは弊社公式ウェブサイトにて詳しく解説しております。次期プロジェクトの設計にぜひお役立てください。

■日本ザイペックス公式ウェブサイト https://www.xypex.co.jp

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