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- 【連載】細田教授に学ぶコンクリートの真実~現場の視点、学術の視点~ 第1回:変わるコンクリートの現状と、施工が握るインフラ品質の真実
【連載】細田教授に学ぶコンクリートの真実~現場の視点、学術の視点~ 第1回:変わるコンクリートの現状と、施工が握るインフラ品質の真実

横浜国立大学の細田教授をお迎えし、日本ザイペックス代表笹島が聞き手となって、インフラの維持管理とコンクリートの長寿命化の未来を見据えた特別インタビューを全4回にわたりお届けします。 第1回のテーマは、現場における「コンクリートの現状と施工品質」。 時代の変化に伴うコンクリート品質の捉え方や、構造物を長期にわたって守り抜くために不可欠な施工技術の重要性について、最前線の知見を伺います。
1:対談の契機と第一印象
笹島
今日は私笹島と細田教授と、インフラの維持管理とコンクリートの長寿命化について語り合いをさせていただければなと考えているのですが、先生がコンクリートを学ぼうと志すきっかけは何だったのでしょうか?
細田教授
ありません(笑)。消去法ですね。土木を選んだのもちょっと恥ずかしいんですけど消去法で。コンクリートは単純に研究室の先生と先輩に惹かれて、やっているうちに博士課程に残ってみたらどうだというような声をかけていただいて。いろんな方と連携しながら少しでも世の中の役に立つような研究をしたいと思って今に至ります。
笹島
実は我々との出会いも、國府勝郎先生のご紹介がきっかけでしたよね。当時、細田教授は「基礎研究には興味ありません。ザイペックスの性能とか防水や塩害はそっちでやってください。私は興味のあることしか取り組みません」とはっきりおっしゃっていて(笑)。こんな風に言ったら失礼かもしれないですけど、面白い先生だなと思ったのが第一印象です。 その分ビジョンを強くお持ちなのかな、って。
細田教授
研究者なんてそんなもんです。自分の興味のあることしかやらないですよ(笑)。
笹島
ちょうどそのころ、(先生の研究の1つである)界面へのザイペックスでのアプローチも有効だと思い始めていたところで、さながら三顧の礼でザイペックス協会の技術顧問としてお迎えをさせていただきました。

2:強度・水密性とインフラ品質の変遷
笹島
実はザイペックスという商材自体は今も昔も大きくは変わりないのですが、逆にコンクリートの側がどんどん変わってきていると感じています。数日前も某プレキャストコンクリートのメーカー様から「国から高炉スラグ(注1)を55%以上入れる高炉セメントを使いなさいと推奨されている」と伺いました。本来100年持つはずのコンクリートそのものが、実は品質や耐久性を落としているのではないか、と私たちは考えているのですが、いかがでしょうか?
注1:高炉スラグ
鉄を製造する高炉で副生される副産物。これを微粉末にしてセメントに混ぜた「高炉セメント」は、CO2排出量削減などの環境配慮型材料として国からも推奨されています。一般に長期的な強度増進やアルカリシリカ反応(ASR)の抑制に有効とされる一方、かつては「初期のひび割れが発生しやすい」と現場で懸念(悪者視)された時期もありました。本来の性能を引き出すには丁寧な打設や徹底した養生管理が不可欠な「施工に敏感な材料」としても知られています
細田教授
笹島さんはコンクリートが悪くなっているというイメージですか? ちょっとコンクリートのインフラ全体の耐久性と問題のスケールが違うので、ここからはあくまでも私の推察になりますが、コンクリート自体が全面的に悪化しているというよりは、骨材の品質が低下してきているケースはありますね。「強度はそれなりに出るんだけど、なぜか水を通しやすいコンクリートができてしまった」という鉄道構造物の事例なども耳にしています。
私が自分で計測したコンクリートでいうと、福島県で施工したトンネルがあるんですけど、自分たちの計測機器を使っての気体の通りやすさや水の通りやすさを調べてみると、強度はそれなりに出ているのにもかかわらず、すごく表層の品質が悪い(水や気体を通しやすいポーラスな状態になっている)というデータが出ました。
これはプレキャスト製品(工場製品)についても同様のことが言えます。さっき話題に出た國府先生も性能照査の重要性を説いておられました。水分がどれだけ浸透しやすいかを試験する方法が、土木学会でも決められたんですよ。品質が良くないと水分がどんどん深部へ浸透してしまうため、自分の工場で作ったコンクリートの「水分の浸透しやすさ」をあらかじめしっかりと試験するような方向へと、業界全体が進んできています。
すべてのケースがそうというわけでは決してありませんが、やはり一つは骨材の品質低下が影響して、「設計上の強度はしっかりと出るけれど、実際には水が通りやすいコンクリート」が潜在的にできている可能性は、実務上十分に考えられますね。
ただ、インフラ全体へ話を広げると、私個人の感覚としては、コンクリートのインフラ品質は全体的に向上してきていると思っています。劣化している構造物の大半は高度経済成長期の「かぶり不足」などの施工不良が原因です。劣化の大半は不適切な施工、設計、材料設計によるものです。現在は大量生産の時代ではないため品質に目が向くようになり、以前より品質は上がっています。
笹島
品質は上がっているというご認識なのですね。私自身、非常に興味深いお話です。品質という考え方についても勉強になります。
3:高炉セメントの特性と養生の役割
細田教授
ええ。高炉スラグが構造物に悪さをするというのは考えにくいと思ってます。置換率が40%以上の高炉セメントB種は、日本の骨材が起こしやすいアルカリシリカ反応(ASR)を抑制する安心材料でもあります。以前は「ひび割れが出やすい」と悪者に見られた時期もありましたが、最近はそういう声も減ってきました。要は「施工に敏感」ということだと思います。雑な施工や養生を怠ると、高炉スラグ微粉末の反応が進まずパワーを引き出せません。
私が関わった山口県のひび割れ抑制システムでは、丁寧に施工することを基本にした結果、高炉セメントで有害なひび割れが発生しないシステムができました。高炉が悪いのではなく、使う側の人間が引き出せていなかったのだと思います。
笹島
「昔のコンクリートは長持ちした」という事実はありますが、最前線から見れば、施工技術とセットで適切に施工されて初めて長持ちするコンクリートになるということですね。私にとっても見方が変わる、大変有意義なお話でした。

【笹島編集後記】〜第1回を振り返って〜
今回、細田教授のお話を伺い、「今のコンクリートは品質が落ちているのではないか」という私自身の固定概念が大きく覆され、大変有意義な学びをいただきました。
現代のコンクリート構造物は、徹底した施工管理によってむしろ品質が向上しています。しかし同時に、骨材の品質低下によって「強度は出ても水を通しやすいコンクリート」が潜在するリスクも存在します。
どんなに優れた材料であっても、施工が伴わなければ意味を成しません。当社として、正しい打設と徹底した養生の重要性を改めて発信していくとともに、骨材由来の水密性低下リスクに対して、コンクリートの深部まで緻密化させるザイペックスの改質技術が確実な盾として貢献できると、強い確信を得た対談となりました。
■ 対談者プロフィール 細田 暁(ほそだ あきら)
横浜国立大学大学院 都市イノベーション研究院 教授
ザイペックス協会 技術顧問
コンクリート工学、持続可能な社会インフラシステムの構築を専門とし、構造物の長寿命化や維持管理に関する研究に従事。2011年の東日本大震災以降は、東北の復興道路をはじめとする多くのインフラプロジェクトにおいて、産官学の共同連携による耐久性向上対策を先導している。土木学会等における要職を歴任し、現場に即した実践的なコンクリート品質管理の普及に尽力している。

