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【連載】細田教授に学ぶコンクリートの真実~現場の視点、学術の視点~ 第2回「つまらない補修」の課題と、界面処理における無機系材料の可能性

横浜国立大学の細田教授をお迎えした特別インタビューの第2回。
今回は、メンテナンス現場で繰り返される再劣化、いわゆる「つまらない補修」の構造的課題に迫ります。
合格基準を満たしながらも剥離が進む「界面(材料の接合面)」の盲点や、過酷な水流環境における長期曝露試験の実態を通じて、構造物を真に守り抜くための無機系材料の可能性について議論を深めます。

2026年5月開催「ザイペックス協会技術営業研修会」にて協会員向けにご講話をいただく
1:「つまらない補修」の正体と界面の盲点
<メンテナンス現場における維持管理の視点>
笹島
先日ザイペックス協会の研修会のご講演(注1)で、再劣化することを「つまらない補修」っておっしゃってたじゃないですか。実際、我々のところに相談が来る案件というのも、再劣化する「つまらない補修」を何回か重ねて、それでも水が止まらなくてようやく「ザイペックスならどうにかなりませんか」と話が来るケースが少なくないんです。その中でも特にザイペックスと先生の研究で共通しているのは「界面(材料の接合面)をいかに保護するか?」という視点で、その重要性についてお話ししていただければと思います。
(注1):「ザイペックス協会」協会員向け研修会にて協会技術顧問としてのご講話
細田教授
まずつまらない補修という言葉ですけど、私が若い頃にJRで働いていた時、維持管理のことを教えてくれた師匠がいましてね。人によっては、劣化したものを決まったメニューでただ直してたり発注するだけで、完全にルーティンワークになってしまっている。その先それがどうなったかのフォローもしないし、再劣化したのか知ったこっちゃない。「壊れているものをただ直す、現状を回復する」それだけでメンテナンスだと思っている人が、世の中にはかなり多いと思うんです。それってつまんないですよね。粛々とただやっているだけで、技術でもないし発展性もない。そういう問題意識を抱えた師匠に私は色々エピソードを注入されたので、再劣化しないような本当の意味での維持管理のためには、曝露試験をとても重要視してきました。メーカーが良いと言っても、厳しい土木の曝露試験をされると1年ぐらいであっという間に化けの皮が剥がれたりする。そういう厳しい曝露試験をして生き残ったものを使いこなしていくといったことを行ってきました。
< 付着強度という指標に隠された「界面」の盲点>
細田教授
そして、「界面」というのは着目している人が非常に少ないんです。付着強度(引張強度)がほぼ唯一絶対の指標で、それが基準値を満足していれば合格だと。しかし、実際には付着強度というものは、全部が綺麗に引っ付いていなくても出てしまうわけですよね。ということは、そこが水の通り道だとか気体の通り道になる可能性が十分にある。その辺に問題意識を感じて研究を始めたというのがわたしの着眼の経緯です。
笹島
では実際今、界面で何が起きていて、なぜそこを守ることが重要とお考えなのですか?

2:長期曝露試験が証明した水流と剥離の現実
細田教授
実際、私が自分の目で見たものが2つあります。どちらも農業用水路なんですが、1つは岡山県で、水流で凸凹に摩耗した鉄筋コンクリートの開水路の表面に、3種類の「それなりに実績のあるモルタル系被覆材」を試験施工しました。摩耗したコンクリートの表面にモルタル系の被覆材をするわけですが、これ全部界面なんですよね。 当然、事前の付着強度なども調べて、全て指標を満足していたわけです。ところが、施工から1年、2年、3年と経過したときの調査結果を見せてもらったところ、年を追うごとに浮きが増えてきて、界面がどんどん劣化していったのです。 その中で、一つ劣化が少なめだったのは、吹き付けの材料でプライマー(注2)を使っていないものでした。 水が襲ってくる箇所の界面というのは、(実績のある物でも)こんなに劣化してまうんだという現実を目の当たりにしました。何が起こっているかというのはちょっと定かではありませんが、水がずっと来ることによって界面って少しでも削れると剥離してしまう実態を見ました。
(注2) プライマー:下塗り接着剤。通常は塗った方が長持ちする
もう1つは、盛岡市役所に意欲の高い担当さんがいて、同じように水流で摩耗した表面に、色々な補修材料システムで被覆する長期の曝露試験を行っていた現場です。
たしか5年くらい前に見に行かせていただいたのですが、1つのシステムを除いて、他は浮いたり剥がれたりして全部全滅でした。その残った1つが、水ガラス系の表面含浸材(注3)だったんですね。
(注3)水ガラス系の表面含浸材:コンクリートの表面に塗布して染み込ませ、表層部を緻密にする無機系の材料
私が(界面の)研究を始めた時、水が来るから劣化するんだったらその水を逆手にとって、界面を緻密にしてしまうようなコンセプトができれば面白いんじゃないかと思って研究を始めました。ザイペックスも、そこに可能性があるかもしれないですね。
耐久性という観点でいうと、無機系のものを上手に使いこなせることは魅力だと思いますね。
【笹島編集後記】〜第2回を振り返って〜
「現状回復を繰り返すだけで、その後の再劣化を追わない」というマニュアル補修の現状は、業界全体が向き合うべき課題です。
事前の数値が合格であっても、実際の過酷な水流下では剥離が進むという岡山の現実、そして常識である下塗り接着剤(プライマー)の有無が明暗を分けた実態には、大きな教訓があります。
細田教授が仰って下さった「耐久性を考えるなら、やっぱり無機系のものを上手に使いこなせるのが魅力」という言葉の通り、水を拒絶するのではなく、コンクリートと一体化して構造物を守るザイペックスの優位性を、一事業者として真摯に届けていきたいと感じています。

■ 対談者プロフィール 細田 暁(ほそだ あきら)
横浜国立大学大学院 都市イノベーション研究院 教授
ザイペックス協会 技術顧問
コンクリート工学、持続可能な社会インフラシステムの構築を専門とし、構造物の長寿命化や維持管理に関する研究に従事。2011年の東日本大震災以降は、東北の復興道路をはじめとする多くのインフラプロジェクトにおいて、産官学の共同連携による耐久性向上対策を先導している。土木学会等における要職を歴任し、現場に即した実践的なコンクリート品質管理の普及に尽力している。

