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- 【連載】:細田教授に学ぶコンクリートの真実~現場の視点、学術の視点~ 第4回:インフラが担う国の命運と、現場に根差した躯体防水の展開
【連載】:細田教授に学ぶコンクリートの真実~現場の視点、学術の視点~ 第4回:インフラが担う国の命運と、現場に根差した躯体防水の展開

横浜国立大学の細田教授をお迎えした特別インタビューも、いよいよ最終回を迎えます。
今回は、これまでの実績に裏付けられた無機系材料の可能性や、都市部の住宅地下防水における「先付工法」の実務例から、混和型材料の展開が直面する法的・運用のハードルまでを幅広く議論します。
最後に、細田教授が被災地での経験から導き出したインフラの真の役割と、これからの時代を担う若い技術者たちへ向けた熱いメッセージをお届けします。

京急線延伸工事
1:無機系材料の可能性と実務展開における壁
<無機系材料の特性を活かした防水工法の実際>
笹島
ここまで、細田教授とザイペックスの共同研究から得られた界面の重要性、そして打継界面における水密性の新たな検証データについて伺ってきました。今回の対談を締めくくるにあたり、我々(日本ザイペックス)の躯体防水やインフラ長寿命化への期待について先生のご意見をお聞きしたいと思います。
細田教授
私はザイペックスを用いた現場をたくさん見たわけではありませんが、京急線の羽田空港延伸プロジェクトにおける地下構造物のひび割れ・激しい漏水補修実績などを聞いています。無機系の材料でしっかり躯体を緻密にし、かぶり部分の防水効果や耐久性を高める点にはものすごい魅力を感じますね。耐久性を考えると、無機に勝ることはないので。
逆に質問なのですが、それだけ実績が良い結果を出しているということは、住宅などの躯体にあんまり豆板(注2)とかの初期欠陥はなかったということですか?
(注2)豆板(まめいた):コンクリートの打設時に、セメントと骨材(砂利など)が均一に混ざり合わず、一部に粗骨材が多く集まって空隙ができてしまった不良部分のこと。強度の低下や漏水の原因となるため、現場では事前の丁寧な締め固めによる発生防止や、適切な補修対応が求められます。
笹島
住宅の地下防水に関しては、「人が日常的に使う(暮らす)」ことを前提に造られるものなので、ある程度緊張感を持ってコンクリートは打設されます。そして数量はミニマムで限定的な上に、工法がしっかりと決められているという側面もあります。実は大手ハウスメーカーA社やB社の住宅地下防水で標準工法にしていただいており、関東エリアだけでも年間100棟以上の全案件を弊社の神奈川の代理店(レスポンス社)が20年近く手がけています。東京は地価が高く、高さ制限もあるため部屋数を確保するための地下室が多いのですが、地下は基本的に水が出る前提で設計されるため、防水の考え方として非常にバランスが取れた工法として選ばれています。
細田教授
A社さんでは、地下室の内側の壁に塗るんですか、それとも外防水ですか?

ザイペックスアドミックス現場投入状況
<混和型材料の展開と実務におけるハードル>
笹島
基本的には外防水です。ただ、東京の住宅地下防水は土留め壁をそのまま外型枠にしてコンクリートを打つため、通常は後から外防水をかけられません。そこで代理店様が20年間やっているのが、外型枠に不織布のマットを先行して貼り、そこにコンセントレートを吹き付けておく「先付工法」です。先にザイペックスを置いておいてコンクリートを打設すると、外側から成分が躯体内部に浸透していくという仕組みです。あるいは、コストや躯体防水工法というメカニズムを考慮して内側からリキッドを施工することもあります。
細田教授
なるほど、先付工法ですか。この間の研修会(注3)で施工事例報告があったエレベーターピットは内側からの塗布でしたね。
笹島
あとは躯体丸ごと防水層化できる混和型(編集注:ザイペックスアドミックス)も広げていきたいです。
細田教授
建築のコンクリートに混ぜ物(混和材)をするのは建築基準法などのハードルも高そうですが、横展開はどうですか?
笹島
まずプラント側の回転(効率)の都合で現場投入せざるを得ないケースが多く、トラックミキサー車にスラリー状にしたアドミックスを添加して2分間高速攪拌して打設しています。防水工法として取り扱っていて、JISのコンクリートではなくなるため建築確認申請のフローなど一定のハードルはありますが、一度ご理解いただけたお客様筋では、その後もご採用いただけることが多いです。適材適所で、環境や目的、ニーズに応じて横展開させていきたいと考えています。
(注3):令和5年度ザイペックス協会営業・技術研修会(2026年5月開催) 細田教授にも技術顧問としてご出席いただく

復興道路の一部 三陸縦貫道を高台から望む
2:インフラが持つ本当の役割と技術者の誇り
笹島
最後になりますが、このようにインフラやコンクリートの世界に興味を持ってくれたこれからの若い世代に向けて、先生が大切にされている思いやメッセージをぜひお聞かせください。
細田教授
実は私がこうしたインフラの持つ本当の役割を腹の底から実感したのは、2011年の東日本大震災の時でした。当時37、8歳で土木学会の調査団員として被災地を見て、「土木インフラがないと、この国は生きてすらいけない」と40歳を前にして初めて知ったのです。その後は東北の復興道路の耐久性を高めるために、産官学の共同連携で長寿命化に携わってきました。
今、地方の若者減少が課題ですが、それはインフラが都会に偏りすぎていることも一因です。50年以上前に全国に新幹線を張り巡らせる閣議決定があったのに、未だに地方には行き届いていない。この国が力強く発展していくには都会に集まりすぎているという(災害リスクとしては)極めて危険な状況を、地域にきちんと分散してどこで災害が発生してもみんなで助け合う国づくりが必須だと思ってます。インフラには国の命運を左右するほどのインパクトがあります。
私はちょっと時間はかかったけど、そのことを分かっていない人は世の中にたくさんいると思うんです。だからこそ、私は自ら発信したり、講義で伝えたりしています。
そしてインフラに関わる方々は、本当に、とても貴重なお仕事をされている。それは公務員であっても、JRであっても、ゼネコンであっても、建設会社の方であっても、コンサルタントであっても同じです。
そこに気づくことができれば、やっぱりそれぞれの現場で「働きがい」が湧くだろうし、立場を超えた「仲間意識」も強くなるはずです。私はそういうふうな思いを持って、これまでやってきました。
笹島
インフラが国の命運を左右するという先生のお話、そして関わるすべての人々へ向けた温かいメッセージを伺い、深く感銘を受けました。
今回の対談を通じて、先生からいただいた無機系材料への期待、そして私たちが向き合うべき現場の課題が明確になりました。一事業者としてその責任の重さをしっかりと受け止め、これからも構造物の確実な長寿命化に貢献できるよう、実直に取り組んでまいりたいと思います。
本日は貴重なお話を本当にありがとうございました。
細田教授
ありがとうございました。
【笹島編集後記】〜第4回を振り返って〜
全4回にわたる細田教授へのインタビューの締めくくりとして、私たちが改めて襟を正したのは、技術を提供する一事業者としての社会的責任です。
東日本大震災の現場から導き出された「インフラには国の命運を左右するほどのインパクトがある」という先生の言葉は、構造物の確実な長寿命化に向き合うすべての人々への重い問いかけです。私自身、東北に縁がある者として、このメッセージの重みをなおさら切実に受け止めています。
実務上のハードルや市場の慣例を理由に現状維持に甘んじることなく、今回データが示された打継界面における1.5MPaの止水データについても、速やかにフィールドテストによる現場検証を進め、持続可能な社会インフラの実現に貢献してまいりたいと考えております。
■ 対談者プロフィール 細田 暁(ほそだ あきら)
横浜国立大学大学院 都市イノベーション研究院 教授
ザイペックス協会 技術顧問
コンクリート工学、持続可能な社会インフラシステムの構築を専門とし、構造物の長寿命化や維持管理に関する研究に従事。2011年の東日本大震災以降は、東北の復興道路をはじめとする多くのインフラプロジェクトにおいて、産官学の共同連携による耐久性向上対策を先導している。土木学会等における要職を歴任し、現場に即した実践的なコンクリート品質管理の普及に尽力している。

